量子力学〜井戸型ポテンシャル中の粒子〜
こんにちは
前回は「量子力学〜波動関数と波動方程式 - 導入〜」ということで波動関数と波動方程式について紹介しました。
今回は大学の量子力学の授業でおそらくほぼ絶対に触れる井戸型ポテンシャル中の電子についてのお話をできればなと思います!
井戸型ポテンシャルと聞くと少し苦手意識を持つかもしれませんが、簡単に言ってしまえば無限に高い壁に囲まれた空間にいる人を考えていることとあまり変わりません。また、一番想像しやすいのは地面だと思います。地面はポテンシャルが無限大の空間であり、自分たちは地面より下に簡単にいくことができません。この観点をなんとなく持つと理解が深まると思います。
では、パターンに分けて紹介します。
1. 一次元の井戸型ポテンシャル中の粒子
では、まず上のような井戸型ポテンシャル中の粒子を考えます。
ポテンシャルとは上でも言いましたが壁です。粒子は壁に囲まれていて外には出られない状態にあるということが図に表されています。
では、この時の粒子の状態を考えていきます。今回は定常状態(時間に依存しない)を考え、且つ1次元を考えているのでとしています。
その準備としてポテンシャルを数式で表すと以下のようになります。
このポテンシャルの場でSchrödinger方程式を考えてみましょう。
ただし、である。この式を丁寧に展開して、状態をを求めていきますね。
を用いると次のように展開できる。
ただし、である。
(i)の範囲
の範囲を考える。
と置くと次のようになる。
これは単振動の運動方程式と同じ形をしているので、一般解は次のようになる。
は係数である。
この係数を考えるために、一旦の範囲の計算はここまでにして次の範囲を先に考えていこう。
(ii)の範囲
この範囲ではまずとして議論を進めていく。
Schrödinger方程式は以下のようになる。
と置くと次のようになる。今ここででなく、と書いたのはが今回十分に大きい場合を考えているためである。また、を実数にするためでもある。すると方程式は次のように変形されていく。
この方程式の解は次のようになる。
は係数である。
この解を考える時に想像してほしいことは、高いポテンシャルの中に入り込んだとしても無限に遠くなると粒子は存在確率が0になるということである。すなわち、となるはずである。よって、状態は次のようになる。
また、今回はのときにとなるので、状態は改めて書くと以下のようになる。
すなわち、無限大の障壁の中では粒子が存在しないということを表す。
では、(i)の範囲の続きに戻ろう。改めてをここに記す。
関数のでの境界条件を考えると次のようになる。
あと少しなので頑張ろう。さらに上2式をBについてまとめると以下のようになる。
すなわち、となる。実部と虚部に分けるとこの解がどうなるかがわかりやすいだろう。
ということで、関数は次のようになる。
前回「量子力学〜波動関数と波動方程式 - 導入〜」でもお話しましたが、粒子がとる状態ごとの確率はで表せます。今回で言えば、1次元の線上の場所ごとの状態の確率を示します。例えば、なら存在がOO%といった具合です。また、その確率を全体で積分したもの(全体で足し合わせたもの)は確率なので1にいなります。ということで、今回の状態関数についても2乗して積分してその係数を求めてみましょう。
が奇数(odd)のときを考える。
が偶数(even)のときを考える。
ゆえに、(i)の範囲で状態は次のようになる。
これを実際に図示してほしい。どうなるだろう。見た目としては、境界で節になるような波であることがわかると思う。この形を覚えておくことでテストなどでもイメージがしやすくなるだろう。また、この境界に定在波の節がくることを波のピン留めという。また、エネルギーも簡単なので計算してみると次のように量子化していることがわかる。
一方テストなどではポテンシャルの範囲が変わってくることがちょくちょくある。もしもが次のようになっていたら、平行移動を考えてほしい。
すなわち、状態関数を状態関数に変えてみると答えが出るだろう。
2. 三次元の井戸型ポテンシャル中の粒子
これはイメージと結果だけ書きますね。
イメージとしては長さが、幅が、高さがの直方体の空間を想像してほしい。その空間から粒子が抜けられたないとすると粒子は直方体中に収まりますね。やることは実は一次元の井戸と変わりません。ただ、イメージをして欲しかったというだけです。またのそれぞれの方向が独立になっていることを考えましょう。すなわち、がに依存したりと互いに依存することはないものとします。その時、モデルは一次元量子井戸が3方向で存在すると思えば問題ないです!ということは、状態関数に対するシュレディンガー方程式は次のようになります。
このときにが独立であることを利用するとのように変数分離することができる。よって、式を変形していこう。
はポテンシャルのそれぞれの方向の和、はエネルギーのそれぞれの方向の和である。また、今回は方向のポテンシャルはには依存しないものとする。同様にもそれぞれやに依存しないものとする。エネルギーも同様に考えるが、座標には依存しないものとする。ただし、方向のエネルギーをそれぞれとする。
この式は恒等式であり、は独立であったのでそれぞれの方向で常に0にならなければならない。ゆえに3つの方程式が得られる。
少し変形する。
すなわち、1次元井戸型ポテンシャルを全方向でとけばいいだけということがわかる。
今日はここまでしよう。まぁテストなどの参考にぜひ!
2017-12-28